このコーナーは東洋の古典から神髄部分を抜き出し、現実生活の指針として役立てようと思い開設しました。


『孟子』 告子下篇


 天の将に大任を是の人に降ろさんとするや、必ず先ずその心志を苦しめ、その筋骨を労し、その体膚を餓えしめ、その身を空乏にし、行いには其の為す所を払乱す。
  心を動かし、性を忍び、其の能くせざる所を曽益する所以なり。


 一つの志を立て、邁進する過程の中で、必ず旧態との軋轢・相克を生ずる。新しいものを創造しよう、より良い制度に改革しようとすれば、必ずと言って良いほど、現状を是とする勢力とのイザコザを生ずるものである。
 『孟子』はそういう立志しながら壁にぶち当たっている人々をこう励ましているのである。
 「天が大任をその人に与える時は、あらゆる障害を経験させて、必ずまずその心身を苦しめて志が本物かどうか試してみるものである。その試練に耐えうる者のみ、はじめて志を完遂できるのである。つまり、あらゆる障害は、天がその人の至らぬ点を補強するために、あえて与えて下さっているのである」
 私も壁にぶち当たった時はいつもこの言葉を思い出し、心身を奮い立たせている。
 また、「中庸」という書物の中に「素行自得」という言葉がある。
「孟子」とあわせてこの言葉を思い起こすようにしているのだが、私は勝手にこう訳している。
「どんな難局に処しても、どんな逆境に立ってもよろしい。自分はあえて厭わん。俺は俺の道を歩んでいく。立派に新しい境地を自力で開拓していく」