特別寄稿
  ハンドボールの指導と中学生の教育について           氷見北部中学校ハンドボール部監督 桜打 佳浩     ハンドボール部の指導者という立場になって、12年目(女子4年、男子8年目) になります。最初は、自分の考えを押しつけるめちゃくちゃな指導で、勝つことだけ を追い求めていたように思います。しかし、北部中学校から八代中学校へ転勤し、人 数の少ない学校で生徒一人一人を見つめながら指導を進めるうちに、私自身の考え方 が変わってきました。勝つことはあくまでも結果であって、大切なのはハンドボール 部の活動を通しての人づくり、という考えです。だからといって、勝つことを二の次 においているのではありません。あくまでも勝利をめざし、最善の努力と研究をする なかで人は成長していくのだと思っています。そんな部活動を通して、人間的に魅力 のある、社会に出て通用する人を育てたいと考えています。 以下、私が部活動の中で心がけていることをまとめてみました。  ハンドボール部員として心がけてもらいたいこと ・基本的生活態度をしっかりと  あいさつをする、失敗したら謝る、時間を守る、社会・学校の決まりを守る、話を 聞くときは相手の目を見る、など、あたりまえのことをしっかりと行わせたいと思っ ています。ハンドボールだけがんばって、あとの生活態度はめちゃくちゃじゃ話にな りません。あくまでも課外活動です。学校生活がしっかりできてはじめてハンドボー ルができるのです。 ・向上心をもて もっと素晴らしい人間になりたい、もっと強くなりたい、うまくなりたい、優勝し たい、といった向上する心が大切だと思っています。現状に満足した時点で、人間の 進歩は止まってしまいます。「俺はこんなもんじゃない、もっと強くなりたい」とい う気持ちを持つことができれば、意識の高い練習に取り組むことができます。練習へ の意識が高くなれば、技術も自然と高くなってきます。 ・感謝の心を忘れずに まず、力強く飛んだり走ったりできる強い身体に育ててくれたお父さん、お母さん に感謝してほしいと思っています。面と向かって「ありがとう」とは言えなくても、 そんな心をもつように伝えています。そして、応援してくれる全ての人たち、大会を 支えてくれる方々に感謝する心をもってほしいと願っています。  特に、「実るほど こうべを垂れる 稲穂かな」ではないですけど、強くなってき たときこそ、実ってきたときこそありがとうの気持ちを忘れてはいけないと思ってい ます。      練習で気を付けていること ・練習時間を長くしない  集中力が持続できる練習時間。それ以上は無駄。 土日の練習においても3時間を超えないように心がけています。基本的には2時間か ら2時間半が中学生には限度ではないかと思っています。 ・練習は日替わりメニュー  毎日同じAランチだと飽きます。学校給食のようにバランスの良い変化に富んだメ ニューを心がけています。基本練習は大切ですが、基本練習は退屈です。ですから、 フットワークやパス練習には様々なパターンがあればいいと思います。遊びながら体 を動かしていて、気付いたらフットワークが身に付いていたというのが理想です。 ・週1回の休養日  練習でエネルギ−を使い果たしています。適切な休養をとらせ、心と身体のエネル ギーを補充させることで、練習により意欲的に取り組ませたいと思っています。たと え完全な休養日ではなくても、軽い運動で終わる日でも休養をとらせられると思いま す。休みは指導者自身、指導者の家族にとっても必要です。 ・教えすぎないこと  どうしても教員という職業の人間は、教えすぎる傾向があると思います。教えすぎ ると生徒は、指導者の声を待つばかりになり自分で考えることをしなくなります。生 徒が考える時間、生徒同士で話し合う時間など、一見回り道のように感じられる時間 が、試合の大事な場面で生きてくると思います。 ・情熱をもって部活動へ  指導者がやる気をもっていなければ、生徒もやる気が出てくるはずありません。 たとえ演技であっても、指導者は熱くあるべきだと思っています。熱く勢いのある練 習を心がけることで、勢いのある試合を展開してくれます。 部活動だけではなく、教員としても情熱を持ち続けることが大切だと思っています。   結語  部活動指導も含めて、教育に完全な指導法はないと思います。去年、いい結果を出 せたから今年もこれでいいだろう、というわけには行きません。生徒は毎年違います。 その年その年にあった最善の指導を、いつも暗中模索しながら探し求めています。  ただ、基本的な考え方は、「礼儀正しく、意欲を持った生徒を育てたい」です。私 自身が礼儀を忘れず、意欲を失わないようにし、さらに努力を重ねていきたいと思い ます。